食の雑学 その10
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食の雑学
 食の雑学 
01 キムチの起源
02 ニンニクの原産地と語源
03 唐辛子伝来の歴史
04 ショウガとウコン
05 稲の原産地と日本
06 焼きたてパン信仰
07 エゴマはゴマではありません
08 マーガリンに潜む危険性
09 箸の文化は日本の文化です
10 焼き肉文化と韓国の肉食の歴史
11 日本の食文化・刺身の起源と歴史
12 韓国の冷麺スープを考える
13 ジャガイモと馬鈴薯・日本への伝来
14 メンマの由来と味付けメンマの起源
15 なぜ宵越しのお茶は体に悪いのか
16 お粥は消化吸収が良くありません
17 ごぼう(牛蒡)にアクはありません
18 蕎麦の原産地と日本への伝来
19 もつ鍋のコラーゲンに美容効果はない
20 砂糖の伝来
21  ドングリは食用になるのか
22 サツマイモの伝来とアグー豚
23 蒟蒻(こんにゃく)の伝来
食の雑学・補足
 補 足
01 キムチの賞味期限
02 キムチと乳酸発酵
03 唐辛子日本伝来説に異論
03 馬鈴薯とジャガイモは別物!
04 パンとご飯 どちらが痩せる?
05 辛いものは脳に悪いか
06 キムチは日本起源?
07 中国がキムチの起源を主張
08 世界の食用油 食用油の種類
09 冷麺は寒い冬の食べ物だった
10 日本の割り箸の種類
11 日本の肉食禁止の歴史
三国時代地図
三国時代
朝鮮の料理本
編訳:鄭大聲  平凡社
日本の伝統の色
Traditional Japanese colors 
 
ブログ So What
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焼き肉文化と韓国の肉食の歴史
焼き肉の起源
高麗時代の仏教を廃した李氏朝鮮では、騎馬民族モンゴルの統治下(異論がある方もいるでしょうが属国であったこといは否定のしようがありません)になり、モンゴル民族の肉食の影響を強く受けます。
「屠門大嚼」や「増補山林経済」の記述によれば、牛、豚、猪、鶏、雉、兎、山羊、犬、鵞鳥、家鴨、鷹、ノロ鹿,、鹿、熊(掌)、豹、等が食用に供され、その中で牛、豚、鶏、山羊、犬、鵞鳥、家鴨等は家畜として飼育し、他は主に狩猟により手に入れていたようです。
しかし、家畜が全て食用に廻された訳ではなく、牛は、農作業や重い荷を運ぶには欠かすことができず、また軍の移動には馬が利用されますので、やはりこれも食用には供されることは余り無かったようです。
しかしながら、当時のモンゴル軍は行軍に際し、重要な食料である羊と共に移動していました。通常は羊を食用(遊牧の民は緑色のものは羊の食べ物として普段は口にしませんでした)にしていても、非常時には軍馬を潰して食べたであろうことは容易に想像がつきます。
古寺
元の統治下にあった李氏朝鮮では、宮廷内にも多くのモンゴル人が配置され、その食生活にも強く影響され、高麗時代の1325年にも牛馬の屠殺禁止令が出されていることからすると、モンゴルによる統治以前にも、馬が食用に供されていたことは確かなようです。また、度重なる牛馬の屠刹禁止令からすると、牛馬を潰して食べてしまう輩が横行していたようです。
豚や鶏はその子豚や鶏卵が物々交換の手段として活用でき、積極的に家畜として飼育されたようですが、これもまた食用目的ではありませんでした。
一般に大型家畜類の飼育には多くの餌を消費します。餌としてよく使われるトウモロコシは、中国から1700年代に伝わり、サツマイモは1763年に対馬から伝わっています。更にジャガイモに至っては、1824年になって初めて中国から伝わっています。つまり朝鮮半島では、家畜の餌となる穀物が極端に不足し、肉類を食習慣とする状況では無かったことが判ります。ましてや、一般民衆が肉食をすることなどあり得なかったことが推察できます。
現在でも北朝鮮の潜入ルポ等で、自由市場(闇市?)の様子が映ると、必ずと言って良いほど、子豚と羊、鶏を売っています。これは広い牧草地を必要とする牛と比較すると、狭い範囲での飼育が可能で、餌にも余り困らず、生産効率が高いからだと言えます。
発令された牛馬等の屠殺禁止令と年代

529年 新羅 殺生禁止令

599年 百済 殺生禁止令

711年 新羅 殺生禁止令

968年 高麗 屠殺禁止令公布

1066年 高麗 3年間の屠殺禁止令公布

1325年 高麗 牛馬の屠殺禁止

1398年 李氏朝鮮 牛の禁止令公布

1403年 李氏朝鮮 犬の屠殺禁止・鷹の飼育禁止

1427年 李氏朝鮮 牛馬宰殺禁止令公布

1763年 李氏朝鮮 牛の屠殺厳禁

1415年 太祖15年 自然死牛肉の官承認に限り販売を許可

1419年 世宗元年 自然死牛肉の販売禁止

「東洋文庫 朝鮮の料理書」 鄭大聲編訳 平凡社より

 殺生は、生き物を殺すと言う意味で広く使われ、「屠殺」は食用目的で動物を殺すことに使われます。「宰殺」は日本では余り使われませんが、中国では食用目的で動物を殺す際に使います。因みに中国では「屠殺」は「食用目的に殺す」と言う意味はありません。中国の影響がより強かった高麗時代が「屠殺」で、李氏朝鮮も1427年に至って「宰殺」を使っていることに興味が湧きます。
焼き肉・ホルモン焼きの起源
 直接自分で肉を焼いて食べる焼肉の形式は、朝鮮動乱後の闇市で広まった「プルコギ」が起源だとされていますが、もともと外食文化の無い半島では、この形式は発展することはなく、最初に焼肉文化が花開いたのは、終戦直後(第2次世界大戦)の焦土と化した日本でした。
日本人に馴染みの無かった「肉を直火で焼く」方式が急速に広まって行ったのは、戦後の闇市だと云われています。当時は大変な時代で、多くの国民が飢えていました。特に都会での食糧難は大変酷く、闇市では「”箸いらず”と呼ばれる申し訳程度の米粒が入っ雑炊に人々が列を成した」と母(当時東京は渋谷区に在住)からよく聴かされたものです。

終戦直後の闇市の賑わい
何時の世も商才に長けた人物はいるようで、この混乱の中で在日朝鮮人が、牛の内臓肉を直火で焼いて売り出し大当たりしたのが、日本での焼肉文化発展の一つのキッカケとなりました。これが所謂「ホルモン焼き」の始まりです。
つまり、韓国の今の焼肉文化は、戦後の闇市で在日朝鮮人のアイデアから生まれた「プルコギを発展させた創作料理」が始まりでだったのです。それに韓国ではもともと内臓肉を食べる習慣は無かったようで、むしろ内臓肉を好む(豚の内臓ですが)のは中国人です。初期の韓国の焼肉店で使われた鍋は、日本ではジンギスカン料理に使われるもので、ジンギスカン料理でこの鍋が活用されだした頃に、焼き肉文化が日本から韓国へ伝った証とされています。
因みに、「ジンギスカン料理」とモンゴル(蒙古)は何ら関係は無く、彼の地の肉料理は基本的に「塩ゆで」で、「ジンギスカン料理」のルーツは中国料理の「鍋羊肉」だと云われています。
話しは大きく脱線しますが、アラビア砂漠のイスラム教徒にとって羊は貴重なタンパク源で、大切な来客があると、その宴で子羊の腹を裂き、鶏肉、ナッツ、米、等を詰めて丸焼きにします。そしてこの後、主賓はこの丸焼きの羊の右目を掴んで食べると言う歓迎の儀式が待っています。食べれば「友好」、拒否すれば「敵」とみなされます。(食べたことはありませんが絶対に美味しいと思います)

清真料理烤羊肉

 ホルモン焼き:内臓肉を直火形式で供する料理をホルモン焼きと呼びますが、これは所謂「ホルモン」とは全く関係が無く、その語源は「放るもの=捨てるものの意」です。本来捨てるものを活用したのですから、この料理を考案した人物は、さぞかし財を成しただろうと考えられます。ビジネス・チャンスは何処にでもあるんですネ…
朝鮮動乱で避難してきた親子
今の韓国の牛肉に偏った食習慣は、朝鮮動乱後に進駐した連合国軍(主に米国)の食習慣が影響したと考えられます。
どこの国でも占領軍の倉庫から流出(横流し?)されるものは多いようで、牛肉もまた例外では無かったと想像できます。つまり、安価(?)で手に入った牛肉をプルコギの形式で提供することで、復興と共に徐々に牛肉が一般に浸透して行ったものと思われます。
歴史的にも半島での牛肉生産は問題を多く抱え、発展した現在の韓国ならともかく、当時は米軍の放出品に頼らざるを得なかったのは事実です。また、占領軍の力は大きく、全ての面でその影響力には侮れないものがありました。
日本でも、戦前には「品が無い味」だと言うことで、マグロのトロは刺身で食べられることが余り無く、その殆どが角煮などに廻されていました。(当時のマグロの角煮はさそ美味しかったことでしょう!)
すし屋で進駐軍(死語ですかネ!)が「美味しい!美味しい!」と食べたのがマグロのトロで、それ以来「右へ倣え」で、今ではダントツの人気を誇る寿司ネタになっています。動乱後の韓国もこれと全く同じような状況があったと考えられ、食習慣は急激に牛肉へと偏向して行ったと考えられます。
過度な肉食は貧困を生みだす南北問題
すき焼き
1960年度の日本の食肉消費量は一、人当たり5キロで、その42年後の2002年度には、6倍弱の28キロに増えています。その内訳は牛肉が6キロ、豚肉が11キロ、鶏肉10キロで、1960年度と比較すると、牛肉は6倍、豚肉は10倍、鶏肉は13倍の伸びを示しています。
牛肉を1キロ生産するのに、約8キロの穀物を必要とし、豚肉1キロでは4キロ、鶏が2.2キロとなります。
肉の生産は驚くほど生産性が低く、エネルギー効率の悪い分野です。
肉の消費は=穀物の消費です。先進国で消費される肉類を生産するのに、全世界の穀物生産量の約半分の量が必用だと云われています。そしてこの貴重な穀物を使って生産される食肉を、全世界の中でも少数の資本主義国家が主に消費しています。この際限ない肉類の消費増大は、確実に世界に飢餓地獄を作り出し、またそれを拡大して行く傾向があります。
農水省は日本の全ての農地と農地に転用可能なあらゆる土地に、米、麦、豆、芋を生産すると仮定し、そこから得られる摂取量では一人一日1600キロカロリーしか摂れず、全面的に食料の輸入が途絶えた場合、約2000万人の国民が餓死すると試算しています。
人の世に限らず、この世は弱肉強食であることは否定できません。どのように悲惨で飢えている時代であっても、充分に食べて肥えている人はいます。食料の均等な分配などハナから考えるだけ無駄です。

 世界の牛肉需給状況 独立行政法人農畜産業振興機構 調査情報部 (PDF)

世界の牛肉統計:全世界  生産量と消費量  (:生産量 :消費量)
グラフ
 Data Sources: USDA: PS&D Online September 2009; USBC: International Data Base, August
国際労働機関(ILO)が2006年に「職業、賃金および食料品の価格統計」によると、2005年10月基準で、韓国の牛フィレ肉の平均価格は56.44ドルで、11カ国の経済協力開発機構(OECD)加盟国を含む13カ国中最も高く、豚肉の価格も 14.12ドルと最も高い、と言う結果が示されました。因みに、日本では牛肉が40.5ドルで、豚肉が13.41ドルとなっています。
また、韓国の「農村経済研究院」が農協などの資料を分析した結果によると、2007年に韓国内で消費された牛肉は、2006年より10.2%多く、凡そ36万6000トンで、国民1人当たり約7.5キロになり、その内、韓国産が2006年より8.5%増え17万2000トン、輸入肉は12.6%多い19万4000トンとあります。
この手の統計でいつも疑問に思うのは、統計は何を基準にしているのかです。日本では輸入牛と高級なブランド牛とでは価格の開きは驚くほど大きく、その開きは恐らく数十倍になる筈です。質を無視した統計は余り当てにはならないような気がしますが…
日本の伝統色・色の呼び名
Traditional Japanese colors